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2018.08.30

港町ブルース

 昭和から平成になって、歌謡曲の勢いがなくなった。阿久悠先生も、平成になるともっぱら小説に専念している。
 昭和歌謡には港町を歌ったヒット曲が多い。中でも森進一の『港町ブルース』は1969年の発売以来250万枚以上というミリオンセラーとなった。歌詞は6番まであって、出てくる港町は、函館、宮古、釜石、気仙沼、三崎、焼津、御前崎、高知、高松、八幡浜、別府、長崎、枕崎。日本縦断である。
 初めて聴いた子供の頃から、いずれ全部の港に行ってみたいと思っていた。ただ小学生だったから、「あなたにあげた夜を返して」とは、どういうことなのかわからなかった。祖父に尋ねると「金を払えばいいんだ」と言っていた。
 最初に行ったのは北海道の函館だった。高校1年生だったがチビだったので、背伸びして海峡を見た。高2の修学旅行は九州で、別府、長崎に行った。同じ頃、木下恵介の映画を観て感動し、御前崎に行った。近いのに神奈川県の三崎にはなかなか行く機会がなく、20代の後半に、わざわざ仕事を作ってマグロを食べに行った。焼津、高知、高松はその後出張で何度か行くことになるが、高松に行ったついでに八幡浜に、鹿児島に行ったついでに枕崎に、ただ行くことだけが目的で慌てて往復した。
 その港町に行ったからといって、別にどうだというわけではない。大抵は子供の頃に想像した港町とは趣が違うし、だからどうということではなく、その町の名物らしいものを食べて酒を飲んで帰るだけである。少し酔うと鼻歌を歌いたくなるが、森進一の歌は顔もそうなってしまうので、1人でいる時は注意が必要だ。
 東北の港町に行く機会はなかなかなく、完全制覇をしたのは50歳を過ぎた震災のすぐ後だった。宮古も釜石も大変なことになっていて、気仙沼ではまだ船が内陸に置き去りにされたままだった。このときは鼻歌どころでなかった。
 気仙沼には『港町ブルース』の歌碑があり、これは震災の津波でも流されなかったらしい。今度行ったら、見ておこうと思う。

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